夢みたもの
「雪村さんって、ホント面白いね」


嫌な雰囲気を最初に断ち切ったのは、宮藤君だった。

肩を軽く震わせながら、クックッと小さく笑う。


「何か納得した」


雰囲気が少し和らぐ。

その事に安心して、あたしは宮藤君に笑い返した。


「あたし・・・何かおかしい?」

「いや」


宮藤君は軽く首を振ると、口元に笑みを浮かべてあたしを見る。


「堤が大切にしたい気持ちがよく分かるよ」

「あたしと航平は、別にそういうんじゃ・・・」


苦笑してそう言うと、宮藤君は小さく笑ってあたしに一歩近付いた。

そしてそのまま、あたしの耳元に顔を寄せる。


「そう?じゃぁ、俺にもチャンスはあるって事?」


「・・・え?」


何を言われたのか理解出来ない。

あたしは呆然と宮藤君を見つめ返した。


「なに・・・言って・・?」

「雪村さんって、可愛いね」


宮藤君は小さく笑うと、あたしの頭に手を伸ばした。



「・・・!!」



怖い。



「・・・ぃやっ・・」


その瞬間。

あたしは思わず、身を縮めて目をつぶった。



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