夢みたもの
「もぅ‥何なの」

「あれ‥?ひなこは嫌だった?」


そう言って首をかしげた航平。

その目が優しくあたしを見つめる。


「恥ずかしいじゃない」

「ふぅん?」


そう呟いた航平は、次の瞬間、小さく吹き出すように笑った。


「ひなこ 顔、真っ赤‥」

「‥‥!?」


慌てて航平から顔を逸らすと、あたしは自分の頬に手を当てた。

熱く火照った頬。

相当赤いんだろうと思うと、余計に顔が熱くなる。



「本当‥ひなこは可愛いね」


クスクス笑いながら、航平はあたしの頭に軽く手を置く。

そして、後ろから抱き締めるようにあたしの肩に腕を回すと、航平はあたしの耳元で小さく囁いた。



「おめでとう ひなこ」

「‥‥」

「やっと‥ずっと欲しかったものを手に入れたね」

「‥‥うん‥」



ずっと欲しかったもの。

小さい頃から夢見てきたももの。


それは、本当の家族。



温かくて

優しくて

居心地の良い場所



確かに今

あたしはそれを手に入れた。



「ありがとう」


あたしは航平の腕に手を添えると、その手に力を込めた。




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