夢みたもの
━・・━・・━・・━

「想像以上の崩れっぷりねぇ‥‥」

「‥え?」


昼休み。

あたしの真向いに座った葵は、机に肘を立てて頬杖を突くと、ため息混じりに苦笑した。


「彼‥‥ひなこ絡みの事については、本当に分かりやすいわ」

「‥‥」

「それで?やっと落ち着いたの?」

「‥うん」

「そう」


思ったよりアッサリした葵の反応に拍子抜けした。


「‥え、それだけ?」

「何よ?他に何か言って欲しいの?」

「うぅん‥‥ただ、葵にしてはアッサリしてる気がして‥‥」


あたしがそう言うと、葵は軽く眉毛を上げてあたしを見たけれど、すぐに小さく笑った。


「バカね。何年一緒に居ると思ってるの?2人の気持ちなんて、ずっと前からお見通しよ」

「‥‥」

「ひなこが余りにも鈍いから心配してたけど、ちゃんとあるべき処に落ち着いて安心したわ」

「うん‥ありがと」


そう言って葵に笑いかけると、あたしは別の席で友達と一緒に居る航平に視線を送った。

あたしの視線に気付いて、ニッコリ笑って手を振る航平。

前は何とも思わなかったのに、今は、航平の行動一つ一つにどきまぎする自分が居る。


「意識し過ぎよ ひなこ」

「だって‥」


葵がクスクス笑う。


「でもまぁ、あの変な噂も立ち消えたみたいだし、本当に良かったわ」



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