夢みたもの
「航平は才能ありそうじゃない?」


母の落ち込んだ顔から視線を外して、あたしは努めて明るくそう言った。


「航平君?」

「小さい頃、一緒に教えて貰ってて・・・凄いなって思ったよ」


あたしがそう言うと、母は何とも言いがたい顔をした。


「そう、そうね・・・航平君は駄目よ」

「どうして?」

「航平君は・・・特別だから」



母の言葉が理解出来なくて、あたしは首をかしげた。


航平が『特別』?

確かに、勉強も運動も・・・悔しいぐらいオールマイティーに出来るけど。


首をかしげたあたしの肩をポンと叩くと、母は明るい声を出した。


「さぁ、ご飯にしよう!?お父さん今日は遅くなるらしいから。雅人、今日の夕飯はシチューですよ〜」

「まんま?」


静かに玩具で遊んでいた雅人が、嬉しそうに笑う。


「ほら、ひなこも手伝って?」

「あ、うん」


あたしを呼ぶ母の声に、あたしは雅人の脇を擦り抜けてキッチンに向かった。


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