夢みたもの
「凄く有名なんですよ?」


コホンと咳払いをすると、結花ちゃんは頬を赤く染めて、上目使いにあたしを見る。


「堤先輩は、告白された子には必ずと言っていい程 こう言うんです『俺の大切な人はたった1人。雪村ひなこだけだから』って」


「・・・はぁ!?」


あたしは思わず声を上げた。


「やだ、何それ!?」


顔が熱くなるのを感じた。

顔だけじゃなくて、全身が火照って息苦しくなる。


航平が何を考えているのか、サッパリ分からない。

仮に断るとしても、あたしの名前を出す必要があるとは思えない。


一体どういうつもり?

何を考えてるの!?



「ホント愛されてますよね」


頭がクラクラして、結花ちゃんの声が遠くで聞こえる。


確か、結花ちゃんは『有名だ』と言っていた。

それはつまり、学校中に知れ渡っているって事なんじゃ・・・?



「素敵ですよね。羨ましいです」


「ちっとも羨ましくない」そう口に出したいのに、驚き過ぎて声にならない。

脳裏に、ニコニコ笑う航平の顔が浮かぶ。



「もぉ・・・航平ったら何考えてるのよ」



あたしはやっとそう呟くと、結花ちゃんの期待を込めた視線を避けて、深くため息を吐いた。


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