夢みたもの
「どうって・・・・別に」


呟くように答えると、あたしは航平の視線を避けて横を向いた。


「でも、何であんな誤解されるような事言うの?」

「誤解?」

「だって・・・知らない人があの断り文句を聞いたら、航平とあたしの仲を誤解するじゃない!?」


「今日、凄く恥ずかしかったんだから」勢いに任せてそう付け加えると、あたしは航平に向き直った。


「航平がモテるのは分かったけど、今度からはちゃんと断ってよね?」

「・・・・」

「ね?」


念押ししてスッキリした。

一息吐いて、あたしは予習の為に英語の教科書を手に取った。


「あのさ、ひなこ?」

「なに?」

「ホントにひなこは、何とも思わない?」

「何が?」


教科書を見ながらあたしがそう言うと、航平は深いため息を吐いて小さく笑った。


「なに?」


ふと顔を上げると、航平が肩を震わせて笑っている。


「あたし・・・何か変な事言った?」

「いや」


航平はそう言うと、いつものようにニッコリ笑う。


「まだ・・・早いよね」


その言葉にあたしが首をかしげると、航平は世界史のノートを閉じて、笑顔であたしに差し出した。

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