夢みたもの
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「あれ?おかしいなぁ・・・」


翌日。

登校したあたしは、真っ先に机の中を覗き込んだ。

でも、机の中に携帯は見当たらない。


「おはよう ひなこ。何してるの?」


朝早くから職員室に行っていたらしい葵が、抱えていたプリントの束を教壇の上に置いてやって来た。


「何か捜し物?」

「そうなの。昨日、携帯忘れちゃったみたいで・・・」


あたしはそう言うと、顔を上げて葵を見た。


「でも、机の中じゃなかったみたい。昨日、茶室に落ちてたりしてないよね?」

「帰る時には気付かなかったけど」

「そっか・・・」


あたしが一息吐いて立ち上がった時、鞠子が教室に入ってきた。


「あ、鞠子だ」


あたしがそう言った直後、鞠子はあたしの名前を叫びながら一目散に走ってくる。


「ちょっと、ひなこ!」

「え、なに?」


鞠子の勢いに圧倒されて、少し身を引きながらそう言うと、鞠子は頬を膨らませた。


「ひなこ 昨日あたしが送ったメール見た!?返信 ずっと待ってたんだよぉ!?」

「あぁ・・・ごめん。携帯、昨日から行方不明で」

「無くしたの?」


あっという間にメールから興味が逸れたのか、鞠子はいつもの調子で首をかしげた。


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