夢みたもの
「たぶん学校にあると思うんだけど・・・」

「へぇ・・・大変だねぇ」

「後で落とし物で届いてないか聞いてみる」

「携帯ないと不安だもんね。鞠子、携帯無くしたら落ち着かないよ!」

「ん~?普段鞠子からのメールぐらいしか来ないから、特に不安は無いけど、無くすのはちょっとね」

「鞠子からのメールなら、見なくて済んで逆に良いんじゃない?」

「葵ちゃん!」


葵の言葉に鞠子が口を尖らせた。


「ヒドイ!鞠子のメールは超重要なんだから」

「はいはい」

「あ、何その反応!?」


鞠子が頬を膨らませる。

葵は肩をすくめると、呆れ顔で小さく息を吐いた。


「じゃぁ、とりあえず聞いてみたいのだけど。昨日の夜、鞠子はひなこに何を伝えたかったの?」

「あ!あのね、前に話した駅前のカフェで、大人の男性・・・って感じのカッコいい人に出会ってね!?」


「え、また?」

「ほら、やっぱり」


あたしと葵は顔を見合わせてため息を吐く。


「たまには鞠子から、実のある話を聞かせて欲しいわ」

「あ、でも、鞠子ってカッコいい人に出会う率が高いよね?」

「でしょ?さすがひなこ!分かってくれる!鞠子自身、次はどんなイケメンに出会えるかドキドキしちゃってるんだ~」


目を輝かせた鞠子に、すかさず葵が突っ込みを入れる。


「そうじゃないでしょ?ひなこも鞠子のフォローなんてしなくていいから」

「葵ちゃん、ヒドイ!」


その言葉に、葵は鞠子の両頬をムニっと引っ張りながらニッコリ笑った。


「毎回毎回、くだらないイケメン話に付き合うこっちの身にもなりなさい?しばらくイケメン話は厳禁!言ったら口を縫い付けるわよ?」


さすが、葵が言うと迫力がある。


「・・・ふ、ふぁい」


情けない声で鞠子がそう言うと、葵は息を吐いて手を離した。


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