夢みたもの
「さすが葵。凄いね」


感心してそう言うと、葵は小さく苦笑した。


「まぁ、鞠子から噂話を取り上げたら何も残らないと思うけど」


「それならいいじゃん!?」という鞠子の訴えは、葵の一睨みで取り消される。


「でも、ちょっと可哀想・・・かな?」


肩を落とした鞠子の後ろ姿を見てそう言うと、葵が肩をすくめて小さく笑った。


「大丈夫よ。心配しなくても、またすぐ言い始めるから。へこたれない処が鞠子のウリでしょう?」

「確かに」


そう言って、あたしと葵が顔を見合わせて小さく笑った時だった。



廊下でザワザワと人が騒ぐ声がし始めた。

しかも時折、女子の悲鳴のような声まで混じっている。


「なに?」

「騒がしいわね。何事?」


あたしと眉根を寄せた葵が顔を見合わせた時。

教室に騒ぎの原因が顔を出した。


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