夢みたもの
「あぁ〜!!」


最初に声を張り上げたのは、後ろで落ち込んでいた筈の鞠子だった。


「噂の編入生だ!!」


教室に姿を現したのは、とても日本人の血が流れているとは思えない容貌をした編入生。

教室の入り口に立って、中をぐるりと見回している。


「なになに!?捜し物?探し人?」


鞠子がウキウキした声であたしの腕を掴む。


「いやぁん!鞠子だったら、どぉしよぉ!?」



楽しそうな鞠子の隣。

あたしは落ち着かなかった。


すっかり忘れていたけれど・・・

昨日あたしは、音楽室を覗こうとした挙げ句、落とした鞄の中身を拾わせて、最終的に逃げ出したんだった。


最悪。

まさか、その事で文句を言われるんじゃ・・・


焦ったあたしは、葵の影に隠れようと体を少しずらした。


「ひなこ?」

「ごめん・・・ちょっと」


そう小声で言った時。

入り口に立っている彼と目が合った。

慌てて目を逸らした時には既に遅く、彼は昨日と同じ、感情の読めない顔でこっちに向かってくる。



「えぇ〜こっち来るよ!?やっぱ鞠子なの!?鞠子どぉしよぉ〜」

「うるさい 鞠子!ひなこ、どうかした?」


葵が不思議そうにあたしの顔を覗き込んだ時。

噂の編入生は、あたしの目の前で足を止めた。

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