夢みたもの
「あ、あの・・・」


まっすぐあたしを見つめる目の前の彼を見上げながら、あたしはどうしたらいいのか分からなかった。

整った顔立ちの編入生は、やっぱり無愛想で表情が読めない。

外国製の人形が立っているようだった。



「ねぇ・・・ひなこ?知り合いなの?」


あたしの腕を引っ張りながら、鞠子が小さく首をかしげる。


「し、知り合いって言うか・・・」


あたしは鞠子をチラリと見て口籠もった。



話した事も無いけれど、それでも『知り合い』って言うのかな?



「だって、ひなこの事見て・・・・・え!?」


鞠子の声が驚きに変わる。

皆が注目する中。

無言で手を伸ばした編入生は、困惑するあたしの手を取った。


「あの、何・・・?」


慌てて手を引っ込めようとしたけれど、意外と強い力で握られていて動かせない。


「あの・・・離して?」


「昨日の事は謝るから・・・」そう言いかけたあたしは、そのまま動けなくなった。



「・・・え?」



あたしの手を握った彼。

そのまま、綺麗にお辞儀をするように、あたしの手の甲に唇を近付けていった。


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