今夜、月に彷徨うユートピア

「あ、めいー!」
「千奈実ー!」


休日の12時半。
ぴったりお昼時の今、千奈実と待ち合わせをしていたカフェの店内はたくさんの人で賑わっていた。
大きく手を振って席に座っている千奈実を見つけ、小さく手を振り返してから小走りで向かいの席へと向かう。


「久しぶりー!いつぶりだっけ、元気してた?」
「いやもう元気すぎて元気に決まってるじゃん」
「ひひっ、なにそれ」
「千奈実こそどうよ?」
「いや、他人の元気パワー全て吸い取ったレベルに元気」
「ははっ、もう爆発するじゃん」
「違うよ、もう爆発済み」
「もう意味わかんない」
「はははっ、私も分かんない。何なのこの語彙力低い会話」
「こっちが聞きたいよもう」


それにまたあはは、と返せばにいっと笑い返してくれる千奈実。
あの頃のこちらまで元気になる笑顔は顕在のようだ。
メニューを覗いて日替わりランチをひとつ。
千奈実はAセットを頼み、ふぅ、と水を一口飲んで一息ついた。




____
「あ、で、どした?なんか話あるって言ってたじゃん」
「ん?あ、そうそう」


そう。
今日ここに来ているのは千奈実に伝えたいことがあると言われたからなのだ。
その旨を伝えると、ハンバーグを食べていたフォークを置いて、千奈実はぴしりと背筋を正した。
思わず、私もそれにつられてフォークを置き、背筋を伸ばす。


< 21 / 47 >

この作品をシェア

pagetop