今夜、月に彷徨うユートピア
「…勿論!」
「ふふっ、めいならそう言ってくれると思ったよ!」
びしっ、っとかの有名な見た目は子供の名探偵のように私に指をさして、にしし、と千奈実は笑った。
私も同じように笑って当たり前じゃん、と返す。
この世にいることの出来る最期の日。
ならば、私が二人に出来る最善のことを尽くそうじゃないか。
確かに私は快斗くんが好きだ。
大好きだ。
だけど、どうしてもこの二人は憎めない。
大学3年生の時から一緒に過ごして、二人がどれだけ優しい人か、私が一番分かっている。
二人と一緒にいられる特権を私の我儘な恋心で潰すことは、自分自身でもつらいことだった。
「二人がぼろっぼろに泣くくらい凄いスピーチしてあげるんだからね!」
「えぇっ!泣き顔皆に晒すとかムリなんだけどー!」
「そこは優しく『楽しみにしてるね』って言うとこじゃないのー?」
そのまま二人ではははって笑いあって。
じゃあまた今度ねって手を振って。
少し軽い足取りで帰る千奈実の後ろ姿を見送って。
そこから、私どうやって帰ったんだっけ。
気が付いたら、手を洗いもせず自分の家のソファの上で蹲っていた。