今夜、月に彷徨うユートピア
___
私は本当に最期を迎えるのだろうか。
実感が無さ過ぎて、いつも通りに過ごしてしまう。
今だって、適当にスマホを触っていただけだ。
花は吐いていない。
抑制剤が未だ効いているのかもしれないし、先生の言うように身体を花にするために、体の中に花を留まらせているのかもしれない。
分からないが、なんだかお腹の中でぐるぐると何かが渦巻いているのは確かだ。
コチ、コチ、と1秒1秒時をすすめる時計の針はもうそろそろ12で重なる。
あと、15分。
座っているだけもなんだかあれなので、ぐるぐると部屋を見て回る。
一人暮らしを始めてからずっと変わっていないこの家。
今思えば、意外と離れがたいものだ。
そんなことを考えていると、ブーッという音を立てながらローテーブルの上のスマホが震えた。
「…え、」
その液晶に光るのは『ちなみ』の文字。
「え…?な、なんで…」
もうリミットまで迫っている。
それでも何故か、私は反射的にその緑の丸を横にスライドしていた。