今夜、月に彷徨うユートピア
「…こわ、い?」
『…ごめん、なんだか変だよね笑 忘れて!ごめん』
「……うん」
『まぁ、ちょっとだけ!話したいなって』
ははって笑ってそう言った千奈実。
二人には、やっぱり少しは言っておいて方が良かっただろうか。
快斗くんを好きになった罪悪感に加えて、更に嘘をつく罪悪感が毎日重くなっていった。
きっとこの二人だったら支えてくれていたかもしれない。
そして、その罪悪感を少しは減らすことは出来たかもしれない。
二人を、信じられなかったのか。
それは、二人を心配させたくなかったと、言い訳に出来るだろうか。
「…ありがとね、千奈実」
『なーに?急に〜私が話したいだけだよ〜』
また千奈実は、うふふ、と笑った。
『あ、そうだ、どうする?快斗とも話す?』
ふわり、という雰囲気で千奈実はそう言った。
確かに、最期の最期に彼の声を聞いてもいいかもしれない。
ちょっとだけ、欲張っても良いだろう。
あ、でも、
「…二人と喋りたいから、スピーカーにして」
『おー!いいね、りょーかい!』
タイムリミットまで、あと、10分。