今夜、月に彷徨うユートピア
「…ごめん、そろそろ切らなきゃ」
『あれ、ほんと?』
「うん、ごめんね」
『うん、そっか』
「今日はありがと」
『こちらこそ!ありがとね』
『ありがとう』
「じゃあ…ばいばい」
『うん、またね!』
『また今度〜』
あと、1分。
『またね』の言葉に、また口を噤んだ。
「あっ、あのさ!」
タイムリミットまであと少し。
それなのに何故か、私は反射的に声をかけていた。
『ん?』
『どうした?』
「……大好きだよ、二人とも」
何も考えていない。
自然に、無意識に言葉が出てしまった。
ドラマみたいな台詞。
だけど、今この言葉を言わなければなんだかいけない気がしたのだ。
『ふふっ、何言ってんの、私もめいのこと大ーーー好きだから』
ふるり、と睫毛が揺れて目に涙がたまる。
そんなことがバレないように、少し、また、声を抑えて。
「快斗くんは?」
恐る恐る、声をかけてみた。
あと、30秒。
『俺も好きだよ。大切な大切な、友達だから。』