あなたに呪いを差し上げましょう
話題を探して窓の外を見るけれど、代わり映えのしない景色である。
「今日の月は随分と丸くて低いですわね。きれいだわ」
無理に紡いだ言葉に、とってきて差し上げましょうか、とルークさまはさらりと答えた。
「まあ、どうやってです?」
くすくす笑うと、いたずらな顔で笑い返された。
「それはもちろん、この窓から、梯子をかけてです」
「随分長い梯子になるでしょうね」
「ええ。国一番の職人を探さなくては」
低くて丸い月がのぼる晩、幼い子どもが父親にお月さまをとってとせがみ、父親が梯子と網で夜空をのぼって月をとってくる話は、子どもたちの寝物語に人気らしい。
よく依頼が来る。
この方は、寝物語に聞いて育った側なのかもしれないわ。
「すてきなお誘いですが、お願いするのはやめておきます。その梯子をつくる者がかわいそうですもの」
「あなたは無欲でいらっしゃる」
「あら、医師のお知り合いはいらっしゃいませんの? 残念ながら、わたくしには伝手がなくて……」
「腕のよい者がおりますよ。会いに行く必要はありませんが」
先回りして断られたけれど、絶対に診ていただいたほうがよいと思います。
「今日の月は随分と丸くて低いですわね。きれいだわ」
無理に紡いだ言葉に、とってきて差し上げましょうか、とルークさまはさらりと答えた。
「まあ、どうやってです?」
くすくす笑うと、いたずらな顔で笑い返された。
「それはもちろん、この窓から、梯子をかけてです」
「随分長い梯子になるでしょうね」
「ええ。国一番の職人を探さなくては」
低くて丸い月がのぼる晩、幼い子どもが父親にお月さまをとってとせがみ、父親が梯子と網で夜空をのぼって月をとってくる話は、子どもたちの寝物語に人気らしい。
よく依頼が来る。
この方は、寝物語に聞いて育った側なのかもしれないわ。
「すてきなお誘いですが、お願いするのはやめておきます。その梯子をつくる者がかわいそうですもの」
「あなたは無欲でいらっしゃる」
「あら、医師のお知り合いはいらっしゃいませんの? 残念ながら、わたくしには伝手がなくて……」
「腕のよい者がおりますよ。会いに行く必要はありませんが」
先回りして断られたけれど、絶対に診ていただいたほうがよいと思います。