あなたに呪いを差し上げましょう
「では、なおさらお願いできませんわ。誇りと経験と技術は、命の次に、簡単に手渡してはいけないものですもの」
それ以上は聞かなかった。
話し相手の仕事など知らなくていい。身分も聞かないほうが話しやすい。礼儀として聞き返されても、わたくしも答えようがない。
「あなたも、簡単に手渡してはいけないものをお持ちですか」
「ええ」
忌子と言われても、誇りだけは捨てたくない。
刺繍と写本は生きるために必死に身につけた。
匿名だからか数は少ないけれど、ときおり招聘のお話をいただく。相手が貴族令嬢、ましてやあの呪われ令嬢だなんて思ってもみないのでしょうね。
でも、そのたびにお断りしている。
刺繍と写本は、わたくしの誇りで経験で、技術だもの。どんなに請われても、簡単に手のうちを明かせない。
探るような瞬きに、ご心配なく、と微笑んだ。
「わたくしは話し相手がほしいのだと、申し上げましたでしょう」
ええ、と曖昧に頷いたルークさまが、きれいな仕草で座り直して、そっと目を伏せる。
「あなたは得がたい話し相手です、アンジー」
「それは光栄ですわ」
その日、お互いによい夜を祈るまで、よく手入れされた剣は、月を映し続けていた。
それ以上は聞かなかった。
話し相手の仕事など知らなくていい。身分も聞かないほうが話しやすい。礼儀として聞き返されても、わたくしも答えようがない。
「あなたも、簡単に手渡してはいけないものをお持ちですか」
「ええ」
忌子と言われても、誇りだけは捨てたくない。
刺繍と写本は生きるために必死に身につけた。
匿名だからか数は少ないけれど、ときおり招聘のお話をいただく。相手が貴族令嬢、ましてやあの呪われ令嬢だなんて思ってもみないのでしょうね。
でも、そのたびにお断りしている。
刺繍と写本は、わたくしの誇りで経験で、技術だもの。どんなに請われても、簡単に手のうちを明かせない。
探るような瞬きに、ご心配なく、と微笑んだ。
「わたくしは話し相手がほしいのだと、申し上げましたでしょう」
ええ、と曖昧に頷いたルークさまが、きれいな仕草で座り直して、そっと目を伏せる。
「あなたは得がたい話し相手です、アンジー」
「それは光栄ですわ」
その日、お互いによい夜を祈るまで、よく手入れされた剣は、月を映し続けていた。