あなたに呪いを差し上げましょう
「手土産や楽しいお話を持ってきてくださってとてもありがたいのですけれど、おかしなことに、最近、いらっしゃる頻度が上がっている気がしますの」
「おや」
「ですから、その方は、いつになったら目を覚ましてしまわれるのかを」
「目を覚ます、ですか」
「御伽噺の魔法使いは随分と念入りに魔法をかけたのでしょうね。魔法はまだ解けないようなのですけれど、では、いまはいったい何時なのかしら、と思うのです。どんなに深い夜でも、いつかは目が覚めるはずでしょう?」
ねえルークさま、真夜中をあと何回繰り返したら鐘が鳴るのか、あなたさまはご存じですか。
やってみましょう、と笑ったルークさまが、なにやら呟いてカードをかきまぜ、数枚裏返した。
幻想的な絵が描かれたカードが並ぶ。
「アンジー、ご安心を。あと百年はかかるそうですよ」
「あら。その占い、やはりあまり当たらないのではありませんか」
「いいえ、そんなことはありませんとも。よく当たると言ったでしょう」
たわいのない会話を重ねた。
わたくしが遠出をしないので、室内でできる遊びや手土産から広がることが多かった。
一般的な交流は難しい。物語のようにすてきな服や宝石をもらっても使いどころがない。
手紙は出せないし、遊びに出かけることもできないし、景色を見に遠出もできない。
古びた部屋で、定位置で、柑橘の香りの紅茶を淹れ、いつも同じ自分用と来客用のティーカップを傾けながら話をする。
そのたびに、よい夜を願い、よい夜とやさしい夢をもらった。
あんまりにもよい夜とやさしい夢を祈られるので、ついつい言いたくなる。
——あなたさまがいらっしゃる夜は、それだけでよい夜になるということを、ご存じないのですか、と。
「おや」
「ですから、その方は、いつになったら目を覚ましてしまわれるのかを」
「目を覚ます、ですか」
「御伽噺の魔法使いは随分と念入りに魔法をかけたのでしょうね。魔法はまだ解けないようなのですけれど、では、いまはいったい何時なのかしら、と思うのです。どんなに深い夜でも、いつかは目が覚めるはずでしょう?」
ねえルークさま、真夜中をあと何回繰り返したら鐘が鳴るのか、あなたさまはご存じですか。
やってみましょう、と笑ったルークさまが、なにやら呟いてカードをかきまぜ、数枚裏返した。
幻想的な絵が描かれたカードが並ぶ。
「アンジー、ご安心を。あと百年はかかるそうですよ」
「あら。その占い、やはりあまり当たらないのではありませんか」
「いいえ、そんなことはありませんとも。よく当たると言ったでしょう」
たわいのない会話を重ねた。
わたくしが遠出をしないので、室内でできる遊びや手土産から広がることが多かった。
一般的な交流は難しい。物語のようにすてきな服や宝石をもらっても使いどころがない。
手紙は出せないし、遊びに出かけることもできないし、景色を見に遠出もできない。
古びた部屋で、定位置で、柑橘の香りの紅茶を淹れ、いつも同じ自分用と来客用のティーカップを傾けながら話をする。
そのたびに、よい夜を願い、よい夜とやさしい夢をもらった。
あんまりにもよい夜とやさしい夢を祈られるので、ついつい言いたくなる。
——あなたさまがいらっしゃる夜は、それだけでよい夜になるということを、ご存じないのですか、と。