あなたに呪いを差し上げましょう
「…………あなたという、ひとは」
わたくしは死ぬはずだった。それがなんの因果か生かされた。
忌子で、不吉な子どもで、生きていることを大勢からは望まれなかった。望んでくれたひとも心変わりした。
わたくしは、自分の至らなさによってではなくて、外見というどうにもしようがないことによって、儚くなることを決められ、望まれ、願われた。懇願された。
死ぬはずだったのなら、死んでもいいと思っていた。
死ぬべきだと思っていた。
死ぬだろうと思っていた。
いつなら一番いいだろうと、死ぬのなら、意味や価値がある散り方がいいと思っていた。
死ぬときがよければ、生まれたときも少しはよくなるのではないかしら、なんて理由で。
「……私も、死にたいと、殺される前に死ぬしかないと思っていたよ」
私は、兄上が好きだからね。不悌をする気にはなれなかった。
ルークさまが静かに目を伏せる。
王は、頂点だ。下には必ずひとがいる。
権謀術数渦巻く王宮で、そのなかには、王位を狙う輩もいるかもしれない。
「王は窮屈だよね。王位を狙われることに、一生怯え続けなくてはいけない。王位を狙う手段はいろいろあるけれど、多いのは弑殺だからね。弟って存在がどれほど必要でどれほど厄介か、兄上たちは言い聞かせられ、体験させられてきたと思うよ」
担がれたらその気がなくても危険になりうる。いまはその気がなくてもいつか気が変わるかもしれない。
「そんな面倒なもの、真っ先に滅ぼされて当然だと思っていたよ」
でも、兄上たちは、異腹の弟を気にかける、よい兄でいてくれた。
「おまえの声は青色をしていると、兄上に褒められたことがあるという話を覚えている?」
「ええ。すてきなお兄さまですね、と申し上げたかと思います」
そうだったね、と頷いたルークさまは、夢見るように微笑んだ。
わたくしは死ぬはずだった。それがなんの因果か生かされた。
忌子で、不吉な子どもで、生きていることを大勢からは望まれなかった。望んでくれたひとも心変わりした。
わたくしは、自分の至らなさによってではなくて、外見というどうにもしようがないことによって、儚くなることを決められ、望まれ、願われた。懇願された。
死ぬはずだったのなら、死んでもいいと思っていた。
死ぬべきだと思っていた。
死ぬだろうと思っていた。
いつなら一番いいだろうと、死ぬのなら、意味や価値がある散り方がいいと思っていた。
死ぬときがよければ、生まれたときも少しはよくなるのではないかしら、なんて理由で。
「……私も、死にたいと、殺される前に死ぬしかないと思っていたよ」
私は、兄上が好きだからね。不悌をする気にはなれなかった。
ルークさまが静かに目を伏せる。
王は、頂点だ。下には必ずひとがいる。
権謀術数渦巻く王宮で、そのなかには、王位を狙う輩もいるかもしれない。
「王は窮屈だよね。王位を狙われることに、一生怯え続けなくてはいけない。王位を狙う手段はいろいろあるけれど、多いのは弑殺だからね。弟って存在がどれほど必要でどれほど厄介か、兄上たちは言い聞かせられ、体験させられてきたと思うよ」
担がれたらその気がなくても危険になりうる。いまはその気がなくてもいつか気が変わるかもしれない。
「そんな面倒なもの、真っ先に滅ぼされて当然だと思っていたよ」
でも、兄上たちは、異腹の弟を気にかける、よい兄でいてくれた。
「おまえの声は青色をしていると、兄上に褒められたことがあるという話を覚えている?」
「ええ。すてきなお兄さまですね、と申し上げたかと思います」
そうだったね、と頷いたルークさまは、夢見るように微笑んだ。