あなたに呪いを差し上げましょう
「褒めてくださったのは、一の兄上だった」

「王太子殿下ですね」

「成人したら、軍に入りたいと思っておりますとご報告をしたときにおっしゃったんだ。『おまえの声は青色をしているな』とね」


王国の成人年齢は十と二年である。


まだ幼い王子が、きっと一桁の年齢のころから考えてきたのだろう結論は、同じ後継者のなかで一等安全を約束された、少しばかり年上の青年の耳に、痛ましく響いたに違いなかった。


「最初はよくわからなかったのだけれど、『なあルーク、青は王の色よ。おまえの声は、よく通る、聞きやすくて耳なじみのよい声だ。おまえは指揮官に向いているだろうな』と言われてね。私が指揮官など、と申し上げたら、困ったように笑われたよ。『我々には、指揮官になるか英雄になるか以外、選択肢はないよ。それが実体を持つかはおまえ次第だが』とね」

「幼い弟君に、はっきりおっしゃいますね」

「やさしいひとだからね。甘い考えを見透かしておいでだったから、悪役になってくださったんだ。兄上は正しかったよ。実際、私はすぐさま英雄として祭り上げられ、腫れもののように扱われた。実力主義の軍でなら——というのは、甘かったのだろうね」


戦場で死ねば、宮中で死ぬより迷惑をかけないだろうだなんて、そんな理由で選んだ。せめて革命の御旗にだけは、使われまいと思った。


「兄上たちは物事をよくわかっておいでだった。私の名前を呼び、誕生祝いをしてくれた。おまえはよく鍛錬に励んでいるな、背が伸びたのではないか、困ったことはないか、ほしいものはないか、一緒に食事をしよう——兄上たちはいつも、兄たらんとしてくれた。だから私は、なにびとにも微笑むひと、なにびとにも泣かぬひとになろうと思った」


以前と同じ会話を繰り返す。


「それは、すてきなお兄さまですね」

「ああ。私には過分なほど、よい兄だよ」
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