あなたに呪いを差し上げましょう
さあ進め、いざ笑え。そうあれかしと、望むのならば。


わたくしたちに、微笑みの仮面をつけて進む以外、生き残る道はない。


英雄や王族として華やかな衣装を身につけ、華やかな宴に出るようなお方が、英雄でも王族でもないただのひととして、人目を忍ばずに、真昼間からあばら屋にやってくる。


以前は真夜中だったのは、夜に眠れないことと、お仕事の両方が関係していたのだとはじめて知った。


昼の休憩時間に抜けてくるということは、いくら英雄とはいえ、というか、英雄だからこそ許されなかったそうだ。


国防を司る騎士は、休憩であっても、勤務時間中は第一に国防を優先しなければならない。

団長として判断を仰がれることも多く、勤務時間外にならないと抜けてこられないので、毎回夜になっていたのだとか。


いまは状況が落ち着いていることもあって、ルークさまは一か月のおやすみを言い渡されている。


状況が変われば別だけれど、いまのところ一か月。


英雄が今回のいくさの褒賞になにも望まないので、仕方なく、いまのうちにとやすみをつくったらしい。

そうしたら、昼間に会える! とこちらを尋ねてくださっているのですって。


……なんと言ったらいいかわからないわ。ええ、わからないわよ。

というか、ルークさまがどうというより、このお話を護衛の騎士さまから聞いたのが一番頭が痛いわ。


護衛の騎士さまは、わたくしではなくて、ルークさまの護衛の方。わたくしが気にならないように、少し離れた場所にいてもらっている。


お供をつけてもよいか確認を取られたときは、ぽかんとしてしまった。
< 92 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop