あなたに呪いを差し上げましょう
「いままでおひとりだったのですか?」


てっきりどこかにお供の騎士がいるものだとばかり。


「あなたさまはいったい、ご自分のお立場をなんだとお思いなのです……!」

「私が一番強いのだから、護衛などいらないと思っていたんだ」

「いるに決まっているでしょう! 足手まといがおそばにいることをお忘れですか!」


仕方がないだろう、あなたをひとりじめしたかったんだ、と子どものようなことを言われて思わず力が抜けてしまった。


……ほんとうにずるいひとだわ。


思い出してじとりと目を向けると、目が合ったルークさまが、華やかに微笑んだ。


「そういえばアンジー、部下があなたにお礼を言いたいと言っていて。連れてきても構わないだろうか」

「ええ、それはもちろん構いませんけれど……」

「私には席を外してほしいと言うんだ。なにもないとは思うけれど、少し離れたところにいるから。なにかあったらすぐ駆けつける」

「はい」


お礼とはなにかしら。


規則正しく扉を叩く音がして、かんぬきを外す。扉を開けると、ずらりと騎士の制服を着た人影が十数人は並んでいた。


「騎士団の方々ですわね?」

「はい。わたしどもは、第三王子殿下を団長に戴く王国騎士団に所属しております。お忙しいところお時間をいただきましてありがとうございます。このたびは、お礼を申し上げたく参りました」


前列中央の、紋章の多いひとが話す役らしい。武張った彼が前に歩み出て礼をするだけで、ぴしりと音がしそうなほどだった。


「ええ、そのようにうかがっています。なかにお入りになりますか」

「いえ。あなたさまさえよろしければ、このままで構いませんでしょうか」

「ええ、構いませんわ」

「ありがとうございます」


呪いが怖いからかと思ったら、女性のお屋敷に押し掛けるだけでもご迷惑ですのに、お邪魔するなどできません、と言われて肩の力が抜けた。


たしかにあのお方を団長に戴くひとたちらしかった。
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