彼は腐女子を選んだ
「リア充爆発しろ。」





何度も心の中で呪文のように繰り返している言葉だ。

対象は、恋愛脳で浮かれてる馬鹿どもが多いが、部活や学校行事に酔いしれる仲間意識の強いお子ちゃまも時に該当する。


例えば、今、何が楽しいんだか、手を打ち、お腹を抱え、大笑いしているグループや、イケメンに群がり媚びた嬌声をあげる女子たち……マジ、うるさい。



私、堀正美にとって、リア充ほどウザイ人種はいない。


もっとも、私もまた、リア充たちからウザがられていることは間違いない。

いわゆるオタクとリア充が相容れないのは、自然の摂理だ。


仕方がない。

なるべく、関わらないことが、お互いのためだ。



オタクはオタクとつるむのが一番……というわけにもいかないのが、オタクのめんどくさいところだけど。



一括りにオタクと言っても、そのジャンルは多岐にわたっている。

私は、男同士の恋愛関係、つまりBLと略されるボーイズラブの分野が大好きだ。

いわゆる、腐女子というやつだな。


この腐女子がまた、めんどくさい。

推しキャラのカップリングや、攻めと受けの役割分担、さらには攻め受けの固定かリバーシブルか……などなど、公式設定から逸脱した妄想の設定が重要なので、そこのところが噛み合わないと分かち合えない。

残念ながら、私は校内に同志を得ていない。


一番近いのが、ひかりんこと藤谷光凛(ひかり)

1年の時は別のクラスだったが、コミケで遭遇して知己を得た。

選択科目を合わせたため、めでたく今年は同じクラスになれた。

ひかりんは、「テニミュ」や「よわペダ」「とうらぶ」などの、いわゆる2.5次元限定のミューヲタ兼腐女子だ。



今日も、ひかりんたち、ジャンルの違うオタク友達と、わかったようなわからんような会話を交わしながらお弁当を食べ終わると、独りでそそくさと図書室へと逃げ込んだ。

ここは、私にとってオアシスのようなものだ。

誰の目も気にせず、大好きな腐った関係に没頭できる。


古今東西、文学や歴史には、垂涎モノのCP(カップリング)が溢れている。


今のお気に入りは、片倉重長。

二代目片倉小十郎のことだが、彼と伊達政宗との関係は創作ではなく、正真正銘の史実だ。

しかも家の記録にも、書状にもちゃんと2人の関係が書き記されて現存してるって……たまらんだろ。

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