彼は腐女子を選んだ
お昼休みに、ひかりんがそう分析してくれた。


今までと違って、みんなで円になって食べてるから、ひかりんは小声のつもりでも、……少し離れた私の耳にもしっかり届いていた。


……なるほど、そういうこと、か。

既に玉砕済みのカースト上位組の何人かは、ひかりんを、続いて私をめっちゃ睨みつけていた。


「……あー、藤谷さん。聞こえてるで。」

あきらは、ひかりんにそう声をかけてから……ぐるりとクラスの子たちを見回して、ハッキリ宣言した。

「俺、本気で、正美ちゃんとつきあってるから。誰に、何、言われようと、俺の気持ちは変わらんけど……正美ちゃんを傷つけたり、侮蔑されるのは、困る。もう、やめてな。」


しーん……と、教室中が静かになってしまった。


沈黙は、賛同ではなく、拒否とか無視だよなあ。



私は、黙ってお弁当を平らげた。


***

そうは言っても、その日の昼休み中にも、他のクラスから女の子があきらに向かって突進し、あえなく玉砕していた。


私は、とても見てられず、一人で図書館に逃げ込んだ。


あとで、ひかりんが教えてくれた。

あきらが、いかに真面目に、いかに誠実に、言葉を尽くして、女の子たちを拒絶し、なおかつ、私の存在を持ち上げてくれていたかを。



「……まさみん、絶対!あきらを逃がしたらあかんで。あんなイイ男いいひんで。」



ひかりんのアドバイスに苦笑でしか答えられなかった。


あきらが、見た目だけじゃない、ほんまにイイ男だってことなんて、もちろん知ってる。


でも、決して、私のモノにはならないんだよ。


嘘みたいやけど、……たぶん来年にはもう……いないヒトなんだよ。



考えると、マジ、切なすぎるけどさ。




授業中、ちらっとあきらを見たら、ニコッと笑顔を向けられた。


新緑を通り抜ける爽やかな風が、あきらの香りまで運んできた。
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