彼は腐女子を選んだ
「気づいてへんかもしれんけど……まさみん、変わった。推しカプの話も全然しいひんくなったし……今は、BLより、あきらのことで頭いっぱいみたい。……や、責めてへんで。それが当たり前やねんから。でも、まさみん自身がそれを自覚してないというか、認めたくないのかな、って。……自分の気持ちに意地張ってんと、もうちょっとちゃんとあきらのこと、大切にしてあげたほうがいいと思う。」


「……言われんでも、そうしてるつもりやねんけど。」


早朝からあきらの見舞いに走った自分の行動の意味を自覚してないわけではない。

たぶん私は、自分で思っている以上に、あきらのことを考えているのだろう。


それが恋か愛かと言われても、わからないけれど……少なくとも、ひかりんに言い訳せず秘密を守ってやりたいと思っているぐらいには特別な存在だと思う。


……好き……なのか?

まあ、好き……なんだろうな。


いや。

わかっている。


ひかりんや、みんなは誤解しているのだ。


あきらは私を好きなわけじゃない。

単に、死ぬまでの風よけとして頼っているだけ。


……恋でも愛でもない……。


うーん。

当たり前だけど、あきらの気持ちと私の気持ちはイコールじゃないんだよな。

あきらとの恋人ごっこに乗せられて、私があきらに惹かれても仕方ないのかもしれない。


あんなにかっこいいんだもん。

イイ男だよ、ほんと。



「……旅行中、ちゃんとまさみんからも、連絡したげや。はい、この話はこれで終わり。余計なことゆーてごめんね。」

ひかりんはそう言って、締めくくった。


「……いや。ありがとう。心配してくれて、ありがたいと思ってる。」


あきらの事情を話せないから、私の気持ちをわかってもらえないのは当たり前のことだ。

しかし、ひかりんが善意から、わざわざ言いたくないだろう助言をしてくれたのは、わかりすぎるほどにわかる。


その気持ちに、素直にお礼を言った。



……それに、私が自分の気持ちに気づくきっかけもくれた……。


うん。

あきらと一緒にいるのは、楽しい。


認めよう。

好きになっても、仕方ないことなんだ。



「では、さっそく、連絡してみよう。……えーと、宿着いた、って……あれ?」


入力しようと思ったら、あきらから鬼のように何度もラインが来てた。

……暇なんだな。

マメな奴。

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