彼は腐女子を選んだ
重たい扉は簡単に開いた。
大きな石の緩やかな階段の上に、コンクリートのお洒落な建物がそびえ立っていた。
硝子のちりばめられた玄関の戸が開き、あきらが出て来た。
……表情は明るいけれど、やっぱり顔色はあまりよくなかった。
あ。
青い腕輪念珠……。
うん、やっぱりよく似合ってる……と、思う。
荒川弓子の24金の十字架は見えなかったけど、多分服の下につけてるのだろう。
まさか胸をはだけて見せろ、というわけにはいかない。
……想像したら気恥ずかしくなって、顔をそむけた。
「すごい家やね。噂には聞いてたけど、びっくりしたわ。……ご両親、なんの仕事してはるの?芸能関係?」
つい聞いてしまった。
「いや。お堅いよ。法律事務所。」
……おう。
それはそれは。
「ご夫婦とも弁護士なん?それは忙しいわ。」
「うん。父は大阪、母は京都で事務所開いてる。……俺も、跡継ぐつもりで勉強しててんけどね……。」
あきらはそう言って、うつむいた。
思わず、しょげた肩をぽんぽんした。
「仕方あるまい。気にするな。パン、買って来たから、一緒に食べよう。」
「うん。ありがとう。弓ちゃんのおばちゃんが、スープ作ってくれてるし。」
……へ?
もしかして、忙しいご両親の代わりに、あきらの面倒をみてくれたのは、荒川弓子の母親……ってことか?
なるほど。
幼なじみというよりは兄弟姉妹のように育ったというわけか。
「身近に世話してくれるひとがいるんだな。よかった。夏休み中もずっと独りで家にいるのかと心配した。」
そう言ったら、あきらが首を傾げた。
「え?正美ちゃん、来てくれるんちゃうの?」
「……お……おう。」
えーと……。
やっぱり、こうなるのか……。
いや、しかし、約束は、学校でだけカノジョのふりするんじゃなかったっけ?
だから期間も1学期の間だけ……って言うてた気がするんやけど……。
いつの間にか、学校関係なく、あきらのそばにいることになってるやん。
まあ、いいけどさ。
淋しいんだろう。
どうせ、私には何の予定もない。
バイトとかしないし、部活も緩い。
趣味の創作活動と勉強ぐらいしかすることがないし。
無邪気に喜ぶあきらを見てるほうが、楽しいよね。
大きな石の緩やかな階段の上に、コンクリートのお洒落な建物がそびえ立っていた。
硝子のちりばめられた玄関の戸が開き、あきらが出て来た。
……表情は明るいけれど、やっぱり顔色はあまりよくなかった。
あ。
青い腕輪念珠……。
うん、やっぱりよく似合ってる……と、思う。
荒川弓子の24金の十字架は見えなかったけど、多分服の下につけてるのだろう。
まさか胸をはだけて見せろ、というわけにはいかない。
……想像したら気恥ずかしくなって、顔をそむけた。
「すごい家やね。噂には聞いてたけど、びっくりしたわ。……ご両親、なんの仕事してはるの?芸能関係?」
つい聞いてしまった。
「いや。お堅いよ。法律事務所。」
……おう。
それはそれは。
「ご夫婦とも弁護士なん?それは忙しいわ。」
「うん。父は大阪、母は京都で事務所開いてる。……俺も、跡継ぐつもりで勉強しててんけどね……。」
あきらはそう言って、うつむいた。
思わず、しょげた肩をぽんぽんした。
「仕方あるまい。気にするな。パン、買って来たから、一緒に食べよう。」
「うん。ありがとう。弓ちゃんのおばちゃんが、スープ作ってくれてるし。」
……へ?
もしかして、忙しいご両親の代わりに、あきらの面倒をみてくれたのは、荒川弓子の母親……ってことか?
なるほど。
幼なじみというよりは兄弟姉妹のように育ったというわけか。
「身近に世話してくれるひとがいるんだな。よかった。夏休み中もずっと独りで家にいるのかと心配した。」
そう言ったら、あきらが首を傾げた。
「え?正美ちゃん、来てくれるんちゃうの?」
「……お……おう。」
えーと……。
やっぱり、こうなるのか……。
いや、しかし、約束は、学校でだけカノジョのふりするんじゃなかったっけ?
だから期間も1学期の間だけ……って言うてた気がするんやけど……。
いつの間にか、学校関係なく、あきらのそばにいることになってるやん。
まあ、いいけどさ。
淋しいんだろう。
どうせ、私には何の予定もない。
バイトとかしないし、部活も緩い。
趣味の創作活動と勉強ぐらいしかすることがないし。
無邪気に喜ぶあきらを見てるほうが、楽しいよね。