彼は腐女子を選んだ
変則的ながら、抱き合っているような形になった。
あきらは、私の鼻を解放して、空いた手で私を抱きしめた。
「……気持ちいい……。ふにふに……。」
あきらがつぶやいた。
「ほとんど脂肪だからな。」
色気のないことを言ってしまった。
ちょっと笑って、あきらは手を放した。
「ごめん。抱き心地よすぎて、つい……。」
「……そうなのか?……別に、かまわんよ。」
うれしいし……って、言葉は飲み込んだ。
代わりに、あきらの欲しい言葉を伝えた。
「かっこいい。あきらは、容姿ももちろんかっこいいが、私は、あきらの、誰に対しても分け隔てなく親切でフレンドリーなところがものすごくかっこいいと思う。……学校行事にも定期テストにも、誰よりも真剣に取り組む姿勢も、めちゃめちゃかっこいい。……誰も彼も、あきらを好きになるわけだ。」
あきらの瞳が揺れた。
紅潮した頬に、一滴……涙が伝い落ちた。
「……正美ちゃん……。ありがとう。」
「別にお世辞じゃないぞ。」
本心なので、ふんぞり返った。
「今日も、みんな、あきらに会えなくて、残念がってた。夏休みに、遊びに誘うって盛り上がってたから、そのうち、連絡来るんじゃないか?」
「あ、うん。何人か誘ってくれた。うれしいけど、もう、俺、病院を出られないんじゃないかな。……脚も痺れたままやし。」
なるほど。
それで弱気になってるのか。
「帰りたければ家に帰ればいい。看護師を雇ってもらえ。」
「……それも考えたけど……急に、身体のどこに痛みが出るかわからないから……病院のほうが、俺が安心やねん。」
しょんぼりと、あきらは嘆息した。
「ごめん。ワガママ言うた。」
「なんも。これぐらい、ワガママには入らんよ。うちの兄上なんか、ナチュラルに俺様でワガママだからな。」
「……へえ。……だから、正美ちゃん、耐性あるんやろか。俺のことでも、さんざん悪く言われてしもて……ごめんな。」
「なんも。あきら、その都度、庇ってくれたやん。……おかげで、私は、王子様に守られるお姫様の気分も満喫できた。……楽しかったな。」
しみじみと、そう言った。
「……うん。俺も。……正美ちゃんには迷惑かけたけど、……楽しかった。」
「いや。迷惑じゃない。ほんまに楽しいんや。……そうだな、ここからは、塔に閉じ込められたラプンツェルの気分を楽しめ。」
あきらは、私の鼻を解放して、空いた手で私を抱きしめた。
「……気持ちいい……。ふにふに……。」
あきらがつぶやいた。
「ほとんど脂肪だからな。」
色気のないことを言ってしまった。
ちょっと笑って、あきらは手を放した。
「ごめん。抱き心地よすぎて、つい……。」
「……そうなのか?……別に、かまわんよ。」
うれしいし……って、言葉は飲み込んだ。
代わりに、あきらの欲しい言葉を伝えた。
「かっこいい。あきらは、容姿ももちろんかっこいいが、私は、あきらの、誰に対しても分け隔てなく親切でフレンドリーなところがものすごくかっこいいと思う。……学校行事にも定期テストにも、誰よりも真剣に取り組む姿勢も、めちゃめちゃかっこいい。……誰も彼も、あきらを好きになるわけだ。」
あきらの瞳が揺れた。
紅潮した頬に、一滴……涙が伝い落ちた。
「……正美ちゃん……。ありがとう。」
「別にお世辞じゃないぞ。」
本心なので、ふんぞり返った。
「今日も、みんな、あきらに会えなくて、残念がってた。夏休みに、遊びに誘うって盛り上がってたから、そのうち、連絡来るんじゃないか?」
「あ、うん。何人か誘ってくれた。うれしいけど、もう、俺、病院を出られないんじゃないかな。……脚も痺れたままやし。」
なるほど。
それで弱気になってるのか。
「帰りたければ家に帰ればいい。看護師を雇ってもらえ。」
「……それも考えたけど……急に、身体のどこに痛みが出るかわからないから……病院のほうが、俺が安心やねん。」
しょんぼりと、あきらは嘆息した。
「ごめん。ワガママ言うた。」
「なんも。これぐらい、ワガママには入らんよ。うちの兄上なんか、ナチュラルに俺様でワガママだからな。」
「……へえ。……だから、正美ちゃん、耐性あるんやろか。俺のことでも、さんざん悪く言われてしもて……ごめんな。」
「なんも。あきら、その都度、庇ってくれたやん。……おかげで、私は、王子様に守られるお姫様の気分も満喫できた。……楽しかったな。」
しみじみと、そう言った。
「……うん。俺も。……正美ちゃんには迷惑かけたけど、……楽しかった。」
「いや。迷惑じゃない。ほんまに楽しいんや。……そうだな、ここからは、塔に閉じ込められたラプンツェルの気分を楽しめ。」