おうちかいだん
誰もいなくなった放課後の教室。
陽が傾いて、黒と緋色の世界の中に身を置いているようで、少し不思議な感覚に包まれる。
梅雨の時期でも、珍しく雨が降っていなくて。
夏の匂いと雨の匂いがふわりと鼻をついた。
「あれ? 誰もいないと思ったのに。何してんの? こんなところで」
教室の入口に立って、不思議そうに私を見てそう言ったのはクラスメイトの矢沢千晶。
私と違って少し派手な女の子で、普段はあまり話すことはないけど、珍しく話し掛けてくれた。
放課後の教室に一人でいたから、変に思われたかな。
「何もしてないよ。矢沢さんは何をしてるの?」
「私? 私は待ち合わせと言うか……まあいいや。時間まで話そうよ。どうせ暇なんでしょ?」
笑いながら私の隣の席に移動して、座ったかと思ったら片足を座面に乗せて行儀が悪い。
「矢沢さん。パンツが見えてるよ? 女の子同士だからって気を抜きすぎじゃない?」
「別に見えたからって減るもんじゃないでしょ。ところでさ、藤井さんはいつも残ってんの? 友達と遊びに行かないの?」
そう言いながら矢沢さんは、バッグの中から鏡を取り出して、自分の顔を映すと指で目を開いて見せた。
陽が傾いて、黒と緋色の世界の中に身を置いているようで、少し不思議な感覚に包まれる。
梅雨の時期でも、珍しく雨が降っていなくて。
夏の匂いと雨の匂いがふわりと鼻をついた。
「あれ? 誰もいないと思ったのに。何してんの? こんなところで」
教室の入口に立って、不思議そうに私を見てそう言ったのはクラスメイトの矢沢千晶。
私と違って少し派手な女の子で、普段はあまり話すことはないけど、珍しく話し掛けてくれた。
放課後の教室に一人でいたから、変に思われたかな。
「何もしてないよ。矢沢さんは何をしてるの?」
「私? 私は待ち合わせと言うか……まあいいや。時間まで話そうよ。どうせ暇なんでしょ?」
笑いながら私の隣の席に移動して、座ったかと思ったら片足を座面に乗せて行儀が悪い。
「矢沢さん。パンツが見えてるよ? 女の子同士だからって気を抜きすぎじゃない?」
「別に見えたからって減るもんじゃないでしょ。ところでさ、藤井さんはいつも残ってんの? 友達と遊びに行かないの?」
そう言いながら矢沢さんは、バッグの中から鏡を取り出して、自分の顔を映すと指で目を開いて見せた。
< 1 / 231 >