おうちかいだん
柵に追い込まれた私は、徐々に荒々しい語気に変わっていく松田さんに迫られて。


気付けば両手首を掴まれて、ピッタリと身体を寄せられていた。


私よりも少し背が低いのに、私よりも大きな胸を押し付けられて。


男の子なら喜ぶような状況かもしれないけど、私にとってはどうやってこの状況から逃れるかということしか考えられない。


結局、松田さんのお願いを聞くのが一番なのかなと、諦め半分にため息をついた。


「わ、わかったよ。じゃあ、1回だけだよ? 軽く唇を当てるだけ。それでもいいなら……」


私がそう言うと、松田さんはまた明るい表情に変わって。


「本当に!? やった!」


何が楽しくて私とキスをしようとしてるんだか。


「でも……私とひとつだけ約束して。キスは一瞬だけで私からする。そして、それが終わったらすぐ友達のところに向かうこと。この約束、守れる?」


「そんな約束なら守れるから安心してよ! じゃあ……来て」


少し顔を上向きにして、目を閉じた松田さん。


なんだかおかしなことになってしまったと後悔しながら、私はゆっくりと歩を進めて。


松田さんの頬にそっと手を添え、ほんの少し、軽く唇を重ねた。


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