おうちかいだん
北島くんは驚いているようだけど、私だってどうしてこんな気持ちになったのか、不思議でならない。


気付けばどちらからともなく顔を寄せて、お互いの鼻が触れ合う。


少しくすぐったいと感じた次の瞬間、唇を重ねて。


頭の中から身体中に広がるように、溶けるような感覚に包まれた。


こんな感覚は初めてで、北島くんが特別な人だというのがわかる。


「……凄い」


「うん、凄いね」


きっと、北島くんも同じことを思ったのだろう。


何を……と言わなくても伝わっている感じが心地良い。


「ねえ、さっきどんな話をしようとしたの? もしかして、怖い話をして私をドキドキさせようとしてた?」


「いや、えっと……もういいだろ? 俺達、付き合ったんだから。今更怖い話なんてよ」


「聞いてみたいな。北島くんが、私にどんな話をしようとしたか知りたいよ」


顔を離し、膝に頬杖をついて微笑みかけると、北島くんは困った様子で頭を掻き始めた。


「なんだよ……大した話じゃねぇぞ? てか、なんで俺は藤井に怖い話なんてしようとしてたんだよ、意味わかんねぇ」


ブツブツと独り言を呟く姿も可愛くて、私はフフッと笑ってみせた。
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