おうちかいだん
これはとある家で起こった話。


その家に住んでいた私は、自分の部屋がある2階に上がる階段が怖くてたまらなかった。


「ただいまー」


学校から帰り、家に入った私は目の前にある階段を見上げた。


家自体が古いから、この色褪せた木の階段が不気味に見えるのかもしれない。


そう考えながら、私は部屋に戻る為に階段を踏み締める。


途端に感じる不気味な気配。


足の裏から、身体を伝って首の後ろまで撫でられるような、そんな気持ち悪い感覚があるのだ。


そして、誰に言われたわけでもないのにひとつ、私はやってはならないと感じている行動があった。


それは……。





「あら、帰ってたの? ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど台所に来てくれない?」




階段を上がっている最中で、お母さんの声が聞こえたけど、私はその声を無視して駆け上がった。


部屋に入ってバッグを置いて、ベッドにうつ伏せに寝転んでため息をついた。


「……この時間にお母さんなんて家にいないのに」


ボソッとそう呟いて、顔を枕に埋めた。


誰の声なのかは知らない。


知らないけどあの声は、何とかして私を階段で振り返らせようとしてくるのだ。


やってはならないこと……それは、階段で振り返ることだ。
< 121 / 231 >

この作品をシェア

pagetop