おうちかいだん
「リサ! 晩御飯よ!」
「はーい、今行く」
部屋の外、1階の方から聞こえたその声に返事をしながら、私はベッドから起き上がった。
と同時に思うのは、またあの階段を通らなければならないということ。
友達にこのことを相談したら、「そんなに怖ければ寝る時だけ通れば良いじゃない」って、他人事のように言われたけど、そんなに簡単なことじゃない。
うちでは家に帰ったらすぐに着替えないとお母さんがうるさいし、ご丁寧に着替えは私の部屋にお母さんが運んでおいてくれている。
つまり、お風呂に入る時も着替えを私の部屋から持って行かなければならないということだ。
以前お母さんに、部屋に持ってこないでと言ったら、じゃあどこに置くの! と怒られたことがあるからそれも無理だと諦めた。
部屋を出て、階段の手すりに触れて1階の方を見る。
薄暗い階段の照明が辺りを照らしているけれど、下に行けば行くほど暗くなって。
かえって不気味さを醸し出しているような、そんな感じさえするよ。
それでも私がやることは変わらない。
振り返らずに、この階段を下りれば良いだけだ。
そう考えて、私は階段を下り始めた。