おうちかいだん
ほんの少しの間、その体勢で震えていたけれど、そっと目を開けると……昨日と同じように、ガラスは割れてなんていなかった。


恐る恐る鏡を見てみると、さっきまで私を食い入るように見ていた女の子の姿もない。


私……おかしくなったのかな。


確かにずっと、怖い怖いと思ってはいたけど、あんなのが見えたのは昨日が初めてだった。


二日続けて気のせいだと言うには、あまりにも恐ろしいことがこの家で起こっているんじゃないかと思ってしまう。


「どうしよう……怖くてお風呂に入れないよ」


一番好きなお風呂なのに、そこに辿り着く為にはとてつもない恐怖を味わわなければならないなんて。


でもなぜだろう。


もうお風呂に行くのも怖くて、部屋に戻りたいのに、お風呂に入らないといけないような気がして。


毎日やっていることだから、やらないのは気持ちが悪いとかいう話じゃない。


私はこの廊下を通って、お風呂に行くことが私の使命のような。


他の人が聞いたらバカみたいと思うかもしれないような気持ちになっていた。


「私、何やってるんだろ。こんなに怖いのに」


廊下を曲がった先、正面にある鏡を見たくなくて、私は立ち上がらずに這ったままでお風呂場に向かった。
< 13 / 231 >

この作品をシェア

pagetop