おうちかいだん
私は……何か大切なことを忘れているような気がする。


本来なら忘れてはいけないような、覚えておかなければならないようなことだ。


どうして忘れているのかはわからない。


恐らく、私が考えていたのはそのことなのだろう。


北島くんの顔を見てそんなことを考えるなんてと、首を横に振って考えるのをやめた。


今、私の目の前にいるのは北島瑛二くん。


ついさっき付き合ったばかりの私の彼氏。


こうして2人でいるんだから、少しは楽しいことをしたいと思うから。


「ところでさ、藤井は家ってどこなの? 途中まで一緒に帰ろうぜ。近かったらどっちかの家に行ってもいいし」


「え?」


突然の北島くんの提案に、私はおかしな声を上げてしまった。


別に住所を教えたくないわけじゃない。


ただ……忘れていたことが少し、思い出されたから。


「え? って何だよ。遠いなら別にいいよ。うちは学校から近いから、俺の家に来る? あ、は、話をするだけだからな」


変に思われないように付け加えたのか、その慌てぶりがまた可愛い。


「ふふっ。そんなに慌てなくてもいいよ。じゃあ行こうか。可愛くない、えぐいパンツの私で良ければね」
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