おうちかいだん

「ひっ!! な、何！ いやああぁぁぁぁぁっ！」


ベタベタと音を立てながら、私に迫ってくる女の人。


振り返って見てみると……四本の腕が生えた女の人の首が、その腕を使って器用に追いかけて来ていたのだ。


想像を超えた気持ち悪さに、もう部屋に戻ることなんて考えなかった。


廊下の突き当たりにある玄関。


そこから出て、友達の家にでも逃げるしかない！


それだけを考えて、背後から迫ってくる化け物から必死に逃げた。


暗く、冷たい空気が私を逃がすまいとしているかのように身体にまとわりつく。


こんなにもうちの廊下は長かったかと思うくらいに、前に進まない。


まるで夢の中で何かに追われているかのような感覚の中で、私は必死に走った。


必死に走ってやっと玄関に辿り着いた時、背後の化け物が、私を捕らえようと飛び上がったのだ。


「ひっ！」


思わず手を伸ばしたお父さんのバット。


玄関に置かれているそれを手に取り、思い切り殴り付けると、化け物は壁に叩き付けられて、ピクピクと痙攣を始めた。


何とか……なったの？


逃げるなら今しかない！


サンダルを履いて、玄関を開けて外に飛び出した私は……なぜか浮遊感に包まれて。








気付いたら、いつもの服を着て自分の部屋のベッドに横になっていた。