おうちかいだん
……やっぱり米津さんのことはわからない。


というか、そもそも何を口走っているのかがわからない。


もしも、米津さんが男の子だったとして、同じことを女の子に言って喜ぶ人なんているかな?


少なくとも私はドン引きするし、実際に今もしている。


「だ・か・ら! 藤井さん、もう1回私とキスしよ? ダメなら舌を出してくれるだけでいいからさ! 藤井さんの舌を舐めて我慢するよ」


すでに条件が破綻しているのが恐ろしい。


これを普通の取り引きだとでも思っているのか。


今まで頭のおかしい人とも話をしたけど、米津さんはまた今までの人とはベクトルが違った恐ろしさを感じるよ。


「えっと……米津さん。ひとつだけ聞かせてほしいことがあるんだけど」


「なになに? 藤井さんが知りたいことは何でも話しちゃう」


「……米津さんは、そんなに派手なメイクをしてて、今、元の自分の顔って思い出せる?」


正直なところ、私は米津さんのすっぴんなんて想像が出来ない。


メイクを落としたらまるで別人……なんて人がよくいるけど、米津さんもそういった人達と同じような気もする。


「そんなの思い出せるに決まってるじゃない……って、あれ? や、やだな。思い出せなくても、メイクを落とせばわかるよ」
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