おうちかいだん
道路を歩き、歩道橋を渡り、川を越えて。


とうとう私は自分の家に戻ってきた。


「これが……私の家……」


私の記憶の中にある自宅とは大きくかけ離れている。


誰も住まなくなって、一体どれくらいの時間が流れたのだろう。


家の壁にはツタのような植物が一面に張って、花壇はもう荒れ放題。


窓には板が打ち付けられていて、今にも崩れ落ちそうな廃墟といった様子で。


玄関のガラスも割れ、朽ちたベニヤ板が申し訳程度に貼られている。


人は入れなくても、動物は入り放題だろう。


「一体この家で何があったの。どうして私は死ななきゃならなかったの?」


その謎を解くために、私は色んな人の話を集めて戻ってきたんだ。


玄関の引き戸に触れると、私が生きていた当時の、綺麗な物へと変化して行く。


元に戻ったというわけではなさそうで、私が昔の姿を思い出しただけなのだろう。


それでも、ボロボロな状態よりは動きやすい。


そう考えて私は引き戸を開けると、家の中に入った。


懐かしいにおいが鼻腔をくすぐる。


この、少し古びた木のにおいが、自分の家だということを思い出させてくれる。


玄関に入り、私が最初に見たのは……2階に続く階段だった。
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