おうちかいだん
だけど不可解なことは何もここだけじゃない。


私が体験した恐ろしい出来事は、クラスメイト達から話を聞いただけでは、何も解決していなかったように思える。


「……全部調べたら、何かわかるかな」


そう考えて、壁のリングからぶら下がるお母さんを押し退けて、私はここから一番近くの場所、台所に向かった。


天井から吊り下げられている人達は私を見ていたけど、私が生きているわけではないと知ると興味を失ったのか、揺れながら回転して背を向けた。


この家が、取り壊しもされずにずっと残っている意味がわかるよ。


きっと、何度も取り壊そうとしたと思うけど、その都度この家の幽霊達が邪魔をしたんだろうな。


私が歩けば、その場所がかつての姿を取り戻す。


歩くこともままならないようなボロボロの家だから、私にとってこれは嬉しい誤算と言えた。


「次は……ここだね」


いつも開いていた台所の引き戸。


一段低くなっているそこに足を踏み入れると、流し台に向かい合って立つおばあちゃんの姿が現れたのだ。


懐かしい。


小学五年生のあの日から、姿を見なくなってしまったおばあちゃん。


お母さんに、うちにはおばあちゃんなんていないって言われて、それで幽霊だと気付いてしまったんだ。
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