おうちかいだん
「おばあちゃん……ただいま」


私がそう呟くと、おばあちゃんは驚いたように身体を震わせて。


キョロキョロと辺りを見回すと、その顔を私に向けた。


昔は、おばあちゃんの顔がわからなかったのに、今はわかる。


優しい顔をした、多分私の本当のおばあちゃんだ。


「あれ……大きくなってまあ。だけどその様子じゃあ……リサちゃんも死んじゃったんだね」


おばあちゃんの言葉に小さく頷くと、私は例の戸棚を見上げた。


「教えておばあちゃん。あの戸棚の中には何が入っているのか。そして、この家で何があったのか。わかることだけでいいから」


そう言うと、おばあちゃんは小刻みに震え始めて、涙を流し始めた。


「恐ろしい……恐ろしいことだよ。私はとんでもない化け物を産んでしまったんだ。私の息子の悪意が、この家では撒き散らされていたんだよ。あの人は息子の悪事を隠そうとしていたけど、それが息子を増長させることになってしまった。ああ、恐ろしい」


この怯え方、ただごとじゃない。


おばあちゃんの息子……つまり、私のお父さん?


悪事というのは考えなくてもわかる。


階段で吊り下げられているあの人達を見れば、おばあちゃんの言っていることがどういうことか、容易に想像出来た。
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