おうちかいだん
鏡がある場所から右に一歩曲がり、また左を向くと長い廊下の先に鏡があるうちの廊下。


まるでこの廊下自体が、私を閉じ込めている牢獄のような気がして。


となると、鏡に映る女の子は私を監視しているのか。


おじいちゃんがうつらうつらしているのを横目に見て、居間の前を通り過ぎる。


「大丈夫、怖くない。これ以上怖いことなんて何もない」


考えてみればおかしなことばかりだ。


私は毎日、お風呂に入るためにこの廊下を歩いているだけ。


学校に行って、ご飯を食べて……という記憶がなくて、ただひたすらお風呂に向かって部屋に戻る。


どうして今までそのことに気が付かなかったんだろうと思ってしまう。


いや、気が付かなかったからこそ、今まで私は囚われていたんだ。


正面の鏡に、不気味な表情を浮かべた女の子が映る。


私の少し前にいるのか、鏡に向かって走っているのが映っている。


「やっぱり……あの鏡の裏にも御札があるんじゃないの!?」


バットを握り締め、鏡の中の女の子を追うように廊下を走って、バットを振り上げて鏡を割ろうとした時だった。


鏡が壁から外されて床に置かれ、壁に立て掛けられたのだ。
< 21 / 231 >

この作品をシェア

pagetop