おうちかいだん
「え? どういうこと?」


これではまるで、あの不気味な女の子が鏡を取り外したような……。


私に割られたくないから外した?







違う。








あの女の子も、狙いはこの御札だったに違いない。


私の目の高さに貼られた、1枚の御札。


手を伸ばしてそれに触れようとすると、やはり灰になって崩れ落ちた。


だけど、これで終わりというわけではなさそうだ。


私は一体何をさせられているの?


お風呂に入るだけの行動に、なんの意味があるっていうの?


全く意味がわからない。


チラリと左側を見ると、脱衣所の引き戸が開いている。


私が動ける中で、唯一心安らぐ場所。


何も考えなくてもいい、恐怖も不安も洗い流してくれる場所。


ここに来て、湯船に浸かって部屋に帰る。


言わば目的地のようなところだ。


だけどどうしてだろう。


今はお風呂場のドアを開けるのが怖い。


ここに何もなかったら、私はずっとこの家に囚われたままだから?


鏡に映る不気味な女の子よりも怖い真実が、ここにあるとでもいうの?


やけに喉が渇く。


唾を飲み込もうとしても飲み込めないような感覚。


そして感じる、「入ってはいけない」と言われているかのような、痛みさえ感じる冷たい空気。
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