おうちかいだん
なぜ、自分が死んでいるのか、だったらなぜ私は自分の死体を見ているのか。


どうして私は、ずっとお風呂に入るという行動を取り続けていたのか。


ああ、そうだったんだね。


私が怖い怖いと思って見なかった鏡。


あれに映っていた女の子は幽霊なんかじゃなかったんだね。


むしろ幽霊は私の方で、あの女の子を怖がらせていたんだ。


俯いて近付いたり、這っていたり……怖くて悲鳴を上げるのも無理はないよね。


私は呪いでこの家に囚われていたわけじゃなかった。


死んだことに気付いていなくて、死んだ時に出来なかったことをしようとしていたんだ。


私がどうして死んだのかはわからないけれど、私は何をしようとしていたのか。


自分がどうなったのか……理解したと同時に、私は廊下の方を向いて声を上げた。


「お母さん! お風呂、上がったよ!」


永遠にお風呂から上がれなくなった、死んでしまった私のために。


きっと、この言葉を言いたくて私はずっと同じ行動を繰り返していたんだ。


そう思って、安心した時だった。












ザバッと湯船の中から赤いお湯を飛び散らせて、不気味な仮面のような顔の、黒い影が立ち上がったのだ。


そして、私が持っていたバットを奪い取ると、それを振りかぶって。


私の頭部に振り下ろされて、私は二度目の死を迎えた。
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