おうちかいだん
私がそう言い終えると、矢沢さんの表情が引き攣ったものへと変わっていった。


「ね、ねえ。ちょっと笑えないんだけど。何が言いたいわけ? 私とこの話をした友達が死ぬって言いたいの!?」


少しずつ怒り始める矢沢さんも可愛い。


でも、私にこの話をしたのは良い判断だったと思うよ。


「だから、矢沢さんが死なない方法を教えてあげるね。私の言う通りにすれば、絶対に死なないから。何があっても、そこから上を見ちゃいけないよ?」


「はぁ? 上を見たからって死ぬ……」


そう言って、矢沢さんが身体を反らして三階の方を見上げた時だった。


「ぐぺっ!」


上から落ちて来た何かが矢沢さんの顔面に直撃し、矢沢さんを巻き込むようにして階下へと落下して行ったのだ。


窓の外から、何かが砕けたような音が聞こえた。


「あーあ……だから言ったのに。上を見ちゃいけないって」


私は席を立ち、さっきまで矢沢さんがいた場所に歩を進めた。


ベランダから階下を見ると、アスファルトの上で倒れる2人の姿があった。


頭部が陥没して目が飛び出し、大量の血が流出している。


腕も脚も、ありえない方向に曲がっていて。


見ただけで即死だというのがわかった。


「あらあら、きっとその子が矢沢さんに話したお友達だったんだね。話したら死ぬなんて話を、人に話しちゃダメだよ」


私はそう呟いて、教室の中に入った。
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