おうちかいだん
「これはね、私が聞いた中でも結構ヤバい話なんだけど。この話を聞いた人は、誰かにそれを話しちゃいけないんだよ。話すとどうなると思う?」


怖い話にありがちな前振りだなと思ったけれど、何が起こるかなんて私にはわからなかったから首を傾げて見せた。


「うーん……死んじゃうとか?」


「正解! 私も友達から聞いた時は、マジでヤバいと思ったんだけどさ。だから藤井さん、この話を聞いても、人に話しちゃいけないよ?」


だったら話さなければいいのに。


そもそも、矢沢さんに話した友達はどうなったのだろう?


「じゃあ、その友達はもう死んでしまったんだね」


私がそう尋ねると、矢沢さんはバツが悪そうに顔を歪めて。


「いや? まだ生きてるよ」


つまりはそういうことだ。


「あ、今『だったら嘘だ』って思ったでしょ? まあいいから。死ぬとか死なないとかは置いといて、話だけでも聞いてよ。マジでヤバいんだから」


少し強引だけど、悪い人ではないのがよくわかる。


楽しいことは、あまり話したことがない私とでも共有したいと思っているのだろう。


クラスでも、矢沢さんが人気者だという理由がわかった気がするよ。
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