おうちかいだん
友達の家のトイレは、どちらも個室になっているか、洋式の個室のトイレで、こんなに大きなものじゃない。
しかも、うちはまだ汲み取り式のぼっとん便所だったから、友達の家の水洗トイレがやけに羨ましかった。
階段を下りて、真っ暗な1階の空気に身を浸す。
夜になると冷たく、恐ろしい空気が充満するから嫌いなんだ。
「お母さん、私が出てくるまでここにいてよ? いい?」
「わかったから。何が悲しくて中学生になった娘のトイレに付き添わなきゃならないんだか。あんたまだ幽霊が怖いんじゃないでしょうね。そんなものいるはずないんだから」
夜中に起こされれば、こんな文句のひとつも出てくるのはわかるけど、そうじゃないよ。
開けるとガラガラと音を立てる引き戸も好きじゃない。
そして何より嫌なのが……。
私にしか見えない人が、トイレに入るとジッと私を見ることだ。
トイレ用サンダルを履いて、中に入ると同時に生気のない顔を私に向ける。
お母さんには見えてなくて、私がいくら幽霊がいると言っても相手にもしてくれないから我慢するしかなかった。
これが、私が夜に一人でトイレに行けない理由なんだ。
しかも、うちはまだ汲み取り式のぼっとん便所だったから、友達の家の水洗トイレがやけに羨ましかった。
階段を下りて、真っ暗な1階の空気に身を浸す。
夜になると冷たく、恐ろしい空気が充満するから嫌いなんだ。
「お母さん、私が出てくるまでここにいてよ? いい?」
「わかったから。何が悲しくて中学生になった娘のトイレに付き添わなきゃならないんだか。あんたまだ幽霊が怖いんじゃないでしょうね。そんなものいるはずないんだから」
夜中に起こされれば、こんな文句のひとつも出てくるのはわかるけど、そうじゃないよ。
開けるとガラガラと音を立てる引き戸も好きじゃない。
そして何より嫌なのが……。
私にしか見えない人が、トイレに入るとジッと私を見ることだ。
トイレ用サンダルを履いて、中に入ると同時に生気のない顔を私に向ける。
お母さんには見えてなくて、私がいくら幽霊がいると言っても相手にもしてくれないから我慢するしかなかった。
これが、私が夜に一人でトイレに行けない理由なんだ。