おうちかいだん
「な、何? なんで……」


ただでさえ怖いと思っているところに、まるで私を驚かせようとしているお母さんの声に腰を抜かして、思わず振り返って廊下の奥に目を向けた。


だけど……そこには誰もいない。


「嘘でしょ……じゃあ、今のお母さんの声は……」


確かにすぐそばで声が聞こえたのに、誰もいないなんて。


気味の悪い何かが、全身を撫で回すように私を包み込んでいるのがわかる。


少しでも動けば、声を出せばどうなってしまうかわからないという恐怖。


そんな中で……視界の端に映った廊下の鏡。


腰を抜かして廊下に座っているこの体勢では、天井しか見えないはずの鏡面。


見たくない……。


見たら絶対に後悔する。


それはわかっているし、天井しか映っていないはずなのに。








なのにどうして鏡に天井じゃない何かが映っているの!?








怖くてたまらないけど、私の勘違いだというならそれで済む話だ。


何も映ってなんていない、怖い怖いと思うから、何かがいるように思ってしまうんだ。


身体に何かがまとわりついているような感覚のせいで、目を動かすことしかできない。


ゆっくりと、目を廊下の奥から鏡に向けると……。








そこに、私を見下ろすようにして不気味な女の子の顔が映っていたのだ。
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