おうちかいだん
「ご、ごめん! あまりにも綺麗だったから、つい手が伸びちゃって。悪気はなかったの、許して。ね?」


私が言うとすぐに手を離して、不安そうな表情に変わって謝ってくる。


松田さんは上手いなあ。


こんな表情を見せられたら、許さない選択肢を選べないじゃない。


きっと、こうやって待ち合わせに遅れても、許してもらうんだろうな。


「わかったよ。大丈夫、怒ってないから。それよりも友達を待たせてるんでしょ? そろそろ行った方が……」


「ありがとう藤井さん! 良かったぁ。藤井さんに嫌われたらどうしようかと思っちゃったよ。初めてこんなに話したのに、それで嫌われたくないもんね」


話を遮って、私の手を取って嬉しそうに頬ずりする。


なんか、怪しいと思っていたけど……やっぱり松田さんはそうなのかな。


となると、待ち合わせをしている友達ともそんか関係だったりして。


手の甲に感じる、松田さんの柔らかい頬の感触。


ゆっくりと松田さんの手から引き抜いて、身体の前で手を組んだ。


「ま、松田さんがどんな人かは何となくわかったよ。じゃああと少しだけ話をしようか。何か……面白い話はある? 例えば、怪談とか」
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