おうちかいだん
お母さんが材料を切っている間に、おばあちゃんは隅に移動。


今までおばあちゃんが鍋を置いていた場所に、お母さんがすぐにフライパンを置いて。


こんな狭い家で、お母さんはおばあちゃんをずっと無視している。


小さく背中を丸めているおばあちゃんが可哀想に思えるよ。


と、そんなことを考えていた時だった。


ふと視線を上に向けた私は……お母さんの頭上にある戸棚が少し開いていることに気付いたのだ。


暗くて中は良く見えないけど、何かが重なって置かれているような……そんな感じがする。


いや、問題はそこじゃない。


少し開いた戸棚から、何かがポトンポトンとフライパンの中に落ちていたのだ。


黒い液体のような何かが。


お母さんはそれに気付いていないのか、フライパンの中に野菜を入れて炒め始める。


「お、お母さん? 上から何かが落ちてる……」


「何かって……何よ?」


私の言葉に、不思議そうに首を傾げてそう返したお母さんも上を見たけど、その時にはもう戸棚は閉まっていて、液体も垂れていなかった。


「変な子。わけのわからないこと言ってないで、部屋に戻ってなさい。そんな所にいられちゃ気が散るでしょ」
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