おうちかいだん
あれは一体何だったのか。


戸棚が開き、そこから黒い液体が落ちていた。


いや、それだけじゃない。


開いた戸棚から、何か黒い物がゆっくりと出てきていたような……。


部屋に戻ってベッドに横になって考えていたけど、答えなんて出るはずがなかった。


あの中に何があるのか確かめてみたいけど、私が帰ってきてから寝るまでは、誰かしらが台所にいるから、こっそり確認することも出来ない。


今だってお母さんとおばあちゃんが料理をしているから調べるのは無理だ。


あそこには何があって、一体何が垂れていたんだろう。


それともお母さんが言ったように私の気のせいで、変なことを言っていただけなのかな。


それを確かめる為にも、一度あの戸棚は中を見なければ。


生まれてからずっと、一度も中を見たことがない物というのは気になって仕方がない。


そして私の性分として、一度気になるとそれが解消されるまでずっと気になり続ける。





「ご飯よ! 手を洗ってきなさい!」





そんなことを考えていると、お母さんの声が聞こえた。


うちは食事を台所にあるテーブルで食べる。


私の席は、戸棚と向かい合う位置だから、気になって仕方ないだろうな。
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